2026年7月に放送を開始した『炎の闘球女 ドッジ弾子』は、1991年から放送された『炎の闘球児 ドッジ弾平』の正統続編である。
主人公は、一撃弾平の娘である一撃弾子。
父の世代から30年以上が過ぎた令和の学校で、廃部となった闘球部をよみがえらせようとする。
前作の人物をそのまま再登場させるだけではない。
弾平や珍念、大河たちの娘が、それぞれ父親の名前、技、因縁を少しずつ受け継いでいる。
そこへ前作の声を利用した配役まで重なり、世代交代そのものが作品の仕掛けになっている。
廃部になった球川闘球部を弾平の娘がよみがえらせる
一撃弾子(CV:中山まなか)は、何事にも全力で突っ込む女子小学生である。
父の代に負傷者が相次いだため、球川小学校の闘球部は廃部となっていた。
弾子は幼なじみの小仏珍子(CV:前田佳織里)とともに部の再建へ動き、強引な勧誘と勝負を通じて仲間を増やしていく。
集まる選手は、正統派のスポーツものから少しずつ外れている。
江袋もち子(CV:関根明良)は、強烈な球の衝撃を柔らかな身体で吸収する守備の要だ。
スーザン・キャノン(CV:大地葉)は、砲丸投げの要領で高威力の球を放つパワー型で、もち子とは強い友情で結ばれている。
音花羽仁衣(CV:篠原侑)は、ドローンやAIを持ち込み、技術と反則すれすれの発想で身体能力の差を埋める。
最初の大きな壁となるのが、二階堂大河の娘である二階堂平子(CV:若井友希)だ。
平子は父が語った弾平への敬意を受け継ぎ、弾子を「永遠のライバル」と定める。
弾平と大河の因縁は、娘同士の勝負へ形を変えた。
ただし、爽やかな好敵手だった大河に対し、平子の弾子への執着はだいぶ様子がおかしい。
この振り切れ方が、『弾子』の令和的な笑いをよく表している。
熱血スポーツと無茶なギャグを同じ勢いで押し通す
監督は博史池畠、シリーズ構成は兵頭一歩、アニメーション制作はCUEが担当する。
試合では、選手の身体能力を超えた必殺技が次々に飛び交い、技名や人物設定には露骨な言葉遊びも混ざる。
ふざけた設定を照れずに描き、そのまま友情や根性の場面へ突入する構成だ。
この作品では、かわいらしい少女の声だけでは熱量が足りない。
日髙のり子と中山まなかの対談では、収録時にスタッフから「もっと熱く」「もっと魂を込めて」と求められたことが語られている。
中山が演じる弾子も、叫びから必殺技まで一気にテンションを引き上げる。
人物の外見は大きく変わっても、声を限界まで張る熱血演技は前作から残された。
日髙のり子の声が弾平一家の時間をつなぐ
キャスティングで最も明確な仕掛けは、前作で一撃弾平を演じた日髙のり子の起用である。
本作では幼少期の弾平を引き続き担当し、作品を導くナレーションも務める。
日髙自身は、このナレーションを少年時代の弾平が少し成長したような雰囲気で演じたと語っている。
さらに、旧・球川小闘球部のマネージャーだった藤堂みさと、現在の一撃みさとの声も日髙が担当する。
前作の主人公を演じた声優が、その主人公の妻、つまり弾子の母まで演じる配役だ。
前作におけるみさとの声を引き継いだわけではなく、弾平役だった日髙を弾平一家の中心へ改めて置いているところに遊びがある。
成人した弾平(CV:小西克幸)は、娘へ「どんな時も全力でいけ」と教えた父親として登場する。
日髙は大人の男性となった弾平を小西へ託し、自身は少年時代の弾平と母のみさとを受け持った。
一人の声優に同じ人物の全生涯を演じさせるのではなく、成長した身体には新しい声を与えながら、家族の記憶には以前の声を残している。
弾平の親友だった小仏珍念(CV:稲田徹)も、現在は闘久寺の住職であり、珍子を溺愛する父親になった。
若い世代では、もち子とスーザンが球川闘球部を支える仲間として並ぶ。
この二組の声優には、別作品でも役同士が継続して関わる共演歴がある。
主要キャストの以前の共演作品
大地葉と関根明良は『プリンセス・プリンシパル』で同じスパイチームに所属する二人を演じた。
小西克幸と稲田徹は『旗揚!けものみち』で、勝負への執念をぶつけ合うプロレスラーを担当している。
大地葉 × 関根明良:スパイチームのまとめ役と王女
『プリンセス・プリンシパル』
『プリンセス・プリンシパル』は、2017年に放送されたオリジナルテレビアニメである。
巨大な壁によって東西へ分断された19世紀末のアルビオン王国を舞台に、女子高校生を装う共和国のスパイチーム「白鳩」の任務を描く。
ドロシーはチームをまとめる実働側の人物で、射撃や運転に長けている。
プリンセスは王国の王位継承者でありながら共和国側のスパイに協力し、自身の地位を潜入や交渉へ利用する。
二人は同じチームで行動するが、最初から無条件に信頼し合っていたわけではない。
第4話では、ドロシーがケイバーライト制御装置の奪取を命じられると同時に、プリンセスが王国側へ寝返る可能性を警戒する極秘任務も受ける。
プリンセスの立場を利用して研究施設へ入りながら、その本人も監視しなければならない。
仲間である王女を信じるか、任務を優先するかという緊張が、ドロシーとプリンセスの距離を単なる同僚以上のものにしている。
小西克幸 × 稲田徹:決着を奪われた宿命のレスラー
『旗揚!けものみち』
『旗揚!けものみち』は、暁なつめが原作を手がける漫画を基に、2019年に放送されたテレビアニメである。
動物を愛しすぎる覆面レスラーの柴田源蔵が異世界へ召喚され、魔獣を倒す代わりにペットショップ開業を目指す。
MAOは、源蔵がケモナーマスクとして活動していた時代からの宿敵だ。
物語は二人の王者決定戦から始まるが、試合の途中で源蔵だけが異世界へ消えてしまう。
唯一勝てない相手との決着を奪われたMAOは、怒りを通り越して源蔵との再戦へ執着する。
MAOも異世界へ召喚され、第11話でようやく源蔵と再会する。
再試合は闘技大会のカードとなり、最終話ではケモナーマスクとMAOが観客の前で正面からぶつかる。
慎重に勝機を探るMAOに対し、源蔵は勝敗だけでなく観客を沸かせるプロレスを優先し、定石を崩して場外乱闘へ持ち込む。
積年の執念を受け止めるのが、理屈よりも熱気を選ぶ宿敵であることまで含めて、二人らしい決着になっている。






